【文化財講座】平成24年度-徳川斉昭の国防をめぐる

平成24年度文化財講座『徳川斉昭の国防をめぐる』

平成24年5月31日(木曜日),文化財講座『徳川斉昭の国防をめぐる』を開催しました。当日は天候にも恵まれ,事前に応募いただいた市民の方30名と,徳川斉昭の国防に関する史跡を見学しました。

行程

  1. 神勢館五町矢場跡
  2. 千束原追鳥狩本陣跡
  3. 神崎鋳砲所跡
  4. 常磐神社(以上,水戸市)
  5. 祝町向洲台場跡(大洗町)
  6. 和田の台場跡
  7. 華蔵院の梵鐘
  8. 文武館跡
  9. 那珂湊反射炉跡
  10. 水車場跡
  11. 雲雀台跡(以上,ひたちなか市)

講座の概要「水戸藩9代藩主徳川斉昭の行った国防に関する3大改革」

大砲の鋳造

 斉昭のころ水戸藩で製造された大砲は,当初青銅製でした。これは銅が比較的加工しやすく大砲鋳造に適していると考えられたためで,その多くは水戸の神崎寺敷地内に造られた鋳砲所(神崎鋳砲所)で製造され,300門近く製造されたうちの74門が幕府に献上されました。
 西洋の大砲はもともと鉄製でしたが,鉄での鋳造では材質を均一に加工することが難しいため,加工のしやすい青銅製の大砲が鋳造されるようになりました。また,鉄製大砲の材質の不均一さは破損しやすい原因でもあり,砲身は青銅のものより厚くせざるをえなかったようです。このため重量がかさみ,機動力を問われる野戦には不向きであり,必然的に青銅製大砲が多く製造されていったようです。
 銅は鉄などに比べて加工しやすい反面,高価であり財政難にあえぐ水戸藩では寺院の鐘をはじめ,藩士や領民にあらゆる銅器類を供出するよう求めるなど,材料確保にはかなりの無理が生じていました。
 この頃諸外国では,技術の進歩により反射炉の構造と規模を改良するなどして,より質のよい鉄生産の技術を模索するようになり,さらに転炉が開発され質のよい鉄の大量生産が可能となりました。このようにして,安価で熱の影響を受けにくい鉄製大砲が多く製造されるようになります。これにより水戸藩でも,先行する諸藩や外国の技術を導入しつつ鉄製大砲を鋳造するようになりました。その製造工場が那珂湊反射炉であり水車場です。反射炉で鋳込まれた大砲は水車場で砲身を内刳(うちぐ)りして仕上げられました。
 反射炉で製造された鉄製大砲は試射でその性能を確かめた後,幕府にも献上されていったともいわれています。
 なお,那珂湊反射炉建設に深く関わった南部藩の大島高任(たかとう)は,反射炉に鉄を供給するために良質の鉄鉱石を探し出し,商用高炉として日本で初めて本格的な出銑に成功し,那珂湊反射炉へと鉄を供給しました。

反射炉跡の写真

台場の築造

 磯浜から鹿島灘までの海岸線には,水戸及び関係諸藩(守山藩など)の台場と海防陣屋が築造されました。なかでも重要な位置を占めていたのが水戸城につながる那珂川の河口にあたる那珂湊でした。この地は江戸時代廻船(かいせん)業で財をなした有力商人を輩出し,大変な賑わいを見せた海運業の一大中継基地で,藩の財政にも大きな影響を与えていました。(当時那珂湊では,蝦夷地からは海産物が,東北からは米が運ばれ,その後,陸路江戸へと運ばれていました。)
 このため,那珂川河口の台地に和田の台場を築造し,対岸の大洗には向洲台場を築造し,さらに和田の台場の北側に位置する東塚原にも台場を築造し,河口の守りをより強力にしていったようです。

和田の台場の写真

軍事演習

 水戸学の強力な攘夷思想のもと,斉昭は異国との戦争に備え台場を築造し,大砲を鋳造して備えたほか,藩校や各郷校での砲術などの軍事訓練を行っており,嘉永6年には神勢館五町矢場を築造して大砲の砲術訓練を行なうなど,普段から有事に備える体制を整えていたようです。また,天保11年からは大規模な軍事演習ともいえる「追鳥狩」が行なわれるようになり,藩内外にその威容をしめしたとも言われています。
 なお,軍事訓練に参加していたのは武士だけではないようで,『那珂湊市史近世編』には「・・・農兵(郷足軽)の採用は,天保7年家臣の土着まで続いた。天保13年にはふたたび海浜の者15歳以上60歳以下の人員を東・南二群の郡奉行が調査し,毎年1回練習をして・・・」とあり,武士を城下から海岸付近などに土着させて海岸防衛にあたらせつつも,身体堅固な農民兵の採用を有用であると考えていたようです。
 そして神官らを祠官,山伏を修験と呼称して軍事訓練に参加させており,様々な身分の者が参加していることが水戸藩での国防の特色ともなっているようです。(以上,当日の資料より)

千束原追鳥狩本陣跡の写真
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更新日:2017年02月01日